ＴＯＰＩＣＳ
今年２００５年の１１月にはおなじみの「空道世界選手権」が開催されるが、第２回となる今回は、従来の男子５階級に加えて、女子１階級が行われることが決定している。その日本代表を決める選考試合が、７／１０(日)、愛・地球博 長久手会場内の愛・地球広場において、行われた。
今大会は、全国から選りすぐられた軽量級４名、重量級４名の強豪選手達によるリーグ戦。加えて、夏の屋外会場、極端に短い試合間隔という悪条件。愛・地球博という大会場で行われた初の女子日本代表選考試合ということで、空道史、大道塾史に残るものとなるであろう今大会は、そのハードさにおいても史上例がないほどの大会となった。
まず軽量級。
出場選手は、これまで大道塾の女子の大会を引っ張ってきた大ベテランの岡（早稲田→横浜北）。強烈な突き蹴りをエンドレスで続ける猛ファイターの寺嶋（名張）。キャリア８年、日進支部長を親に持つ神山（日進）。そして我が“TEAM-U”から出場した前原映子（久喜）という面々。
その前原は第１試合で、いきなり優勝候補筆頭の大ベテラン岡（横浜北）と対戦。デビュー戦の緊張と常にない会場の雰囲気の前に、さすがに動きが固い。強烈な左ローで抵抗を見せるも、ベテランの上手さと強さの前に無念の判定負け。
一方、その岡も第３試合で、寺嶋（名張）と対戦すると、彼女一流の猛ラッシュの前に劣勢模様。寝技でチャンスを作るもポイントを取りきれず苦杯を飲む。
更には、その寺嶋も、次の神山との対戦でしつこくうまい立ち組みの前に得意の突き蹴りを封じられ完敗、と試合はどんどん混戦模様に。
その中で前原は、その後第９試合で寺嶋にも敗れ、いよいよ後がない。最後のチャンスとなった第１１試合の神山戦に全てを賭ける。一進一退の中での終盤劇。投げ倒して上になった前原は、最後の死力を振り絞り、小手絞めでプレッシャーを掛けながらマウントへ。空撃四連打で見事“効果”を奪取し、劇的勝利を勝ち取った。
この結果、軽量級ブロックでは岡と寺嶋が二勝一敗、神山と前原が一勝二敗となり、（二勝同士の）直接対決で勝利していた寺嶋が決勝へ駒を進めることとなった。
一方の重量級ブロック。
生粋の空道ファイターが揃った軽量級と違い、その出場選手達は、'05年北斗旗女子選抜重量級優勝の井上（横浜北）を軸に、アマボクシング１１年の小田（八王子）、柔道初段の坂原（北河内）、テコンドー二段の石田（府中）とさながら異種格闘技戦の様相。ここも波乱に継ぐ波乱が訪れる。
第２試合（＝重量級にとっての第１試合）に登場した本命井上だが、石田の射程距離の長い突き蹴りに苦しみ、いきなり初戦でつまづくと続く第４試合の小田戦でも、延長まで縺れたものの最後は競り負け、二敗目。更には坂原にも敗れ、まさかまさかの三連敗。当日早朝出発で肉体のコンディションが悪かったのか、あるいは調子を崩していたのか？ いずれにせよ本命脱落の状況下で、こちらも大混戦。
最終的に、アマボクシングで全日本経験もある小田が、前に前にと攻め出る気の強さと抜群のパンチテクニック、加えて大舞台での経験値の差を見せて、三勝を上げ、決勝進出を決めた。
この結果、決勝戦は軽量級を制した寺嶋と重量級を制した小田との一騎討ち。両者疲労の極なれど、共に前へ攻め出る激しい内容で、さすが決勝と言うに相応しい激闘ぶり。
両者一歩も引かず、女性離れした（？）強烈な突き蹴りが応酬され、僅差判定は必死と思われたが、終劇は唐突に訪れた。
寺嶋の右ミドルが「バスン！」と鈍い音を立てて炸裂すると、さしもの小田も身体を二つに折って戦闘不能に。脛パッドをつけ、胴当ての上からの一撃で一本勝ちというアンビリーバブルなまでの劇的勝利で、寺嶋が女王の座に輝いた。
尚、決勝に先だって行われた三位決定戦では空道の地力差を見せた岡が坂原を退け、三位入賞を果たした。
こうして、これまで数多くの大会を観戦されてきた事務局長をして「最も過酷な予選」と言わしめた女子選抜大会は終幕したが、この結果のみで日本代表が決定した訳ではない。
現在予定されている代表枠は軽量級２名＋重量級２名の計４名。このメンバーの他にも、今大会は怪我で出場できなかった現全日本チャンピオンの堀篭（佐久）の存在もある。
今後の各選手達の更なる切磋琢磨と、（代表に選ばれた時の）世界大会での大活躍を期待したい。
尚、今回惜しくも予選突破とはならなかった前原。「才能煌く宝石箱」と称された彼女をもってしても、やはり空道ルールのデビュー戦（しかも大道塾以前の武道格闘技経験はゼロ）で勝ち抜けるほど、全日本の壁はヤワではなかったと言うことだろうが、主審を務めていた現空道軽量級世界チャンピオンの小川指導員に「地味だが強い」（＝まだパッと目を引くほどの技術完成度はないが地力がある）と評価してもらい、三位入賞の岡選手をして「今大会、一番効いたのは前原選手のロー」と言わしめた（岡選手は大会後に膝をアイシングし続けていた）、それだけの存在感は示したと言えるだろう。
今後、前原がリザーバー or 強化選手の枠に入れるかどうかは難しいところかもしれないが、既に彼女は「（今回の結果がいずれにせよ）四年後には絶対に日本代表になって世界大会に出ます」と力強く宣言している。
その意気や良し！ 前原映子は世界を目指す！！
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